「四旬節第1主日」(A年) 説教
2014年3月9日・加藤 英雄 師

 

  イエスはヨルダン川でヨハネから洗礼を受けられました。洗礼を受け、水から上がると、天がイエスに向かって開きました。天の父がわが子に呼びかけます。これはわたしの愛する子、わたしの心に適う者。わたしの命に生きる者、わたしの思いを語り、行う者。
 イエスは神様です。しかし、今日、イエスは悪魔から誘惑を受けるため、神様に導かれ荒れ野に行かれました。荒れ野で、40日間の断食に入ります。神様はイエスに苦しみを与えます。イエスは神様。人の知恵をはるかに超える知識を持っておられる。神様の知恵を持っておられる。しかし、天の父はイエスに人を知れと望まれたのです。悪魔に出会いなさい。そして、人の弱さを体で知りなさい。欲求の力、誘惑を心と体で受け止めなさい。イエスはこの荒れ野で、断食の苦しみを知りました。そして、次々と悪魔の誘惑に会うのです。
 誘惑する者が空腹のイエスに言います。腹が空いているのなら、これらの石にパンになれとおっしゃい。あなたは神の子、なんと幸いな事か。必要なものは何でもお造りになれる。断食することなどない。苦しむことなどないでしょう。 イエスは言われます。人はパンだけで生きるものではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる。 生きる。命を喜ぶ。体が生きる、それ以上に心が生きる。自然が見える。隣人が見える。神様が見える。神様のみ言葉が心に刻まれている。-わたしの道具として働きなさい。
 冬、柔道部、剣道部に寒稽古があります。朝早く学校に行って寒稽古の中に入る。その苦しさを喜んでやりたい。お母さんが一番大変です。子供より早く起きて、弁当を作らなければいけない。一週間、二週間。寒稽古で子供の心が引き締まっています。心の求めるものを大切にしてやりたいのです。 断食の時がある。断食を大切にしたいのです。食べることの出来ない苦しさを知る。食べ物は神様の恵みを言うことを今一度心に刻む。毎日、日常で食べることの出来ない人たちがいる。その出来事を体で知るのです。
 悪魔はイエスを聖なる都に連れて行き、神殿の屋根の端に立たせて言うのです。神の子ならここから飛び降りたらどうですか。あなたの足が石に打ちあたらないように、天使たちが手であなたを支えると書いてあります。  巡礼で、その場所ではないか、という所に行ったことがあります。緑のない山岳地帯です。岩をくりぬいて上って行きます。修道院のようです。小さな足場がある。そこに立って下を見ると高い、足がすくむところです。 イエスは言われます。あなたの神である主を試してはならない。 悪魔は聖書をよく知っています。悪魔よ、お前は何のために聖書を読んでいるのか。他人より、聖書を知っている満足のために読んでいるのか。祈る。悪魔は祈りの力をよく知っている。お前は誰に、何のために祈るのか。悪魔は自分の欲求を満たすために、力を求めているのか。 もっと驚くべきことは、悪魔が聖なる都に自由に入ることが出来る。神殿、教会に入り、自由に歩き回ることが出来る。屋根にまで上っている。
 悪魔のイエスに対する三度目の誘惑。悪魔はイエスを非常に高い山に連れて行き、世のすべての国々とその繁栄ぶりを見せ、言います。もし、ひれ伏してわたしを拝むなら、これを皆与えよう。 この話を聞くと、正月の初詣を思い起こします。バブルの時は、100万、200万のお賽銭を賽銭箱に投じて、儲けさせておくれと願う。 40数年前ですが、鳥取に旅行に行った時のことです。バスでしたか、電車でしたかは忘れましたが、壊れかかっている神社を見かけました。あの神社はどうしたのでしょうかと聞くと、あの神社は、お願い、お祈りをちっとも聞いてくれないので、だれも参拝に来なくなってしまったという返事です。寂しいですね。
 悪魔は非常に高い山にイエスを連れて行かれた。高い山は神様と出会う場所です。悪魔は人をはるかに超える力のうちに、イエスと共に、すべてを見渡される山の上に立ったのです。悪魔はイエスに言います。わたしに服従しなさい。見えるこの宝物をすべてあなたにあげよう。
 イエスは言われます。あなたの神である主を拝み、ただ主に仕えよ。
 どこにいても、どんな時にも、悪魔の誘惑、試練があります。わたしたちは悪魔のどんな甘い誘惑、試練にも打ち勝ち、神の道具として働きます。神様のみ心のうちに歩みます。誘惑、試練を受け取り、乗り越えて、神様への道を歩むことが出来たらいい。
 信仰年が終わったと言われました。「信仰」を一年間思い巡らしました。今から信仰への出発です。人は神様から命を吹き入れられて生きるものになった。人が神様の言葉を聞かず、蛇の言葉を信じた。蛇はこの世で賢く生きるもの。蛇が、この世でよくなりますようにと願いながら、聖書を読んでいる、祈っている。見える物の世界で力を振るっている蛇に従ってはいけない。
 イエスは言われます。わたしたちはこの世に生きている。しかし、この世に属していない。イエスによって、イエスに導かれ、神の命への道を歩みます。



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